板ばさみのジレンマ

「人間、ストレスで死ぬこともあるんだね」

死者はどこか遠い目をして呟いた。

「そりゃ、そうだろうね」

死神Navy(ネイビー)は頷いた。

「僕はね、俗に言う中間管理職ってやつだったんだ」

死者は淡々と独白する。

「上司から怒られ圧力をかけられ、部下からは突き上げられる。上から下からの板ばさみでさ。自分でも気付かないくらいのストレスを溜め込んでいたんだね。死ぬときはあっさりだ」

「何か未練はあった?」

「うーん…そうだなあ…ひとつだけやりたかったなぁ」

「何を?」

「上司はね、出来もしないノルマをいつも僕たち部下に押し付けてたんだ。だから、一度だけ。思い切り辞表を叩きつけてやりたかったなぁ」

「ふふっ…誰でも一度は考えることだね」

「ねえ、死神さん。君だったらどうする?」

「どうする、とは?」

「上司から出来もしないノルマを課せられた時さ。来世のために聞いておきたいと思ってね」

「そうだな…私なら」

死神Navyはふと空を仰ぐと答えた。

「上司から出来もしないノルマを課せられた時、『他人に死ねと言われたら死ねるんですか?』と聞くね」

「禅問答みたいだね?どういう意味だい?」

「他人に死ねと言われたら死ねるんですか?と聞かれて『死ねる』と答える人間はまあいないだろうね。もしいるなら会社の屋上に連れてって死んでみせろと背中を押すね」

「死神さんは怖いなぁ。じゃあ、『死ねない』と答えた場合は?」

「簡単なことさ。『自分で出来もしないことを他人に押し付けるな。あんたの課すノルマは死ねと言ってるようなものだ』と返してやればいいのさ」

死神は乾いた笑いを浮かべた。


END.


10/15 18:23

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