Sift, 笑って。

「君は俺に『何故あまり笑わないのか』と訊いた事があったね」

冬の寒さとは無縁な、暖かい喫茶店の中に男の声が響く。
アンティーク調の椅子に腰掛けて話す男は、一見サラリーマンのような服装をしている。

「その時俺はこう答えた筈だ。 『死神に笑顔は必要ないからだ』と」

サラリーマン風の男の名は、Sift(シフト)。
彼の正体は、死神。

「…という事は師匠、他にも何か理由があるんですか?」

今まで黙っていた男が口を開く。
Sift(シフト)の正面に座っている男は、いつも黒い特攻服という奇妙な格好をしている。
特攻服の男、Navy(ネイビー)は、まだ温かい紅茶を一口飲んだ。

「死神に笑顔は必要ない。 それは動かしがたい事実なんだけど…」

「師匠、ひょっとして。 笑えない…とか?」

「そう。 俺はね、笑えないんだ」

「意外ですね。 でも納得」

「少しは笑えるんだが…心の底から笑えた事はないんだよ」

Sift(シフト)は手の中のコーヒーカップに視線を落とした。
コーヒーの黒がゆらゆら揺れる。

「今ではもう…笑い方さえ分からない。 だからNevy(ネイビー)、ひとつ訊いてもいいかい?」

「私の分かる範囲なら答えますが」

「俺は…俺は上手く笑えてるかい?」

冷たい目が、Navy(ネイビー)を見つめている。

「えぇ。 師匠、上手く笑えてますよ」

傍から見て、それは笑っていなかったとしても。
私にはとても上手く笑っているように見えるから―――

END.


12/12 14:55

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