小説

You are …?

*この物語はフィクションです。

「ック、クククッ。」
やがてギンは俺の顔を見ながら、小さく微笑うと、
「やはりお前は面白いな。」
と言った。
「オヤジギャグは言っていないぞ?」
俺は真顔でギンに言う。
「いや、実はこの依頼はな、断った。
だから安心してこの事をお前に言ったんだよ。」
「断っただと?」
「ああ。」
「何故だ?」
「割に合わない。
実は刑務所から出所した夫は、精神崩壊していてな。
すぐに精神病院に入ったそうだ。
多分、車という凶器で自分の子供を殺したという事実が受け入れられなかったんだろうな。
彼はもう十分苦しんだ。
俺が彼の人生にピリオドをうつ必要は無いね。」
珍しく。
珍しくギンは優しく微笑する。
「なぁ、ギン。」
俺は殺し屋の名を呼ぶ。
「何だ?」
「記憶をなくす前の俺はどんなだった?
一体、俺とお前に何があった?
できれば、教えてくれないか?」
「………。」


08/30 16:36

この記事を 編集・削除

[公開] [小説]

コメント(0件)

一瞬の躊躇と有利な情報

*この物語はフィクションです。

絶句。
俺は目を見開いたまま、銀髪の殺し屋ギンを眺めていた。
「驚いただろう?」
意地悪そうにギンは笑う。
「俺も調べた時には驚いたよ。まさかアンタがこの事件に絡んでいたとは思わなかったからな。」
「ひとつ、訊きたい。」
俺はようやく沈黙を破った。
「何だ。」
「また、人を。殺すのか?」
「ああ。それが俺の仕事だからな。」
「これからも、か?」
「これからも、だ。」
「じゃあ、何故お前は人を殺すんだ?」
「言う必要は無いな。」
「じゃあ、何故それらの情報を俺に教えたんだ。」
一瞬の、躊躇。
「それは…」
「言う必要は無い筈だ。
なのにわざわざ俺に情報を与えた。
何故だ?」
「…言っても支障は無いからだ。」
「それは、どうだろうか。」
俺は無表情でギンを睨むと、一気に言い放つ。
「今、ここで俺がお前を阻止しないという保証は何処にも無い。
なのにお前はわざわざ俺にとって有利な情報を与えたな。
何故だ?」
今度はギンの方が絶句した。


08/24 17:45

この記事を 編集・削除

[公開] [小説]

コメント(0件)

銀髪の殺し屋は微かに微笑う

*この物語はフィクションです。

「お前が今語った夫婦はどうなった?」
ギンは相変わらず意味不明な質問をする。
「は?」
「『依頼人の旦那は刑務所。
妻は精神病院にいる。
離婚はしていない。』と言ったな。」
「それがどうした。何か関係あるのか?」
「大アリだ。」
ギンはクックッと嘲笑う。
「あれから年月が経ち、状況が変わってるんだよ。」
「状況だと?」
「お前は知らないだろうが、刑務所にいる依頼人の旦那は去年既に出所し、精神病院に入った妻はとっくの昔に退院している。」
「そんな馬鹿な。」
「嘘じゃねぇよ。依頼されたからな。」
「依頼、ってまさか…」
「そのまさかだ。」
銀髪の殺し屋は微かに微笑うと静かに語る。
「刑務所にいる依頼人の旦那は去年既に出所し、精神病院に入った妻はとっくの昔に退院している。
そして、その精神病院を退院した妻から殺して欲しい人がいると依頼された人物が、2人の子供を殺した旦那なんだよ。」


08/23 13:06

この記事を 編集・削除

[公開] [小説]

コメント(0件)

哀しい生き物

*この物語はフィクションです。

「人って悲しい生き物ね。」
ユウがボソリと呟く。
「あぁ、そうだな。
間近で人が壊れて行くのを見たよ。」
「ねぇ、少し後悔してる?」
「あの時依頼を引き受けなければこんな悲劇は起きなかったのにな。」
「フン、悲劇、か。」
事務所のドアから声が聞こえる。
銀髪の殺し屋がそこに立っている。
「狂って行く人間は日々増えていってるな。」
「ギン、何しに来たんだ。」
俺とマサは警戒しながら訊く。
「別に、用など無いさ。」
ギンは笑う。
「ただ、いい事を聞かせて貰ったな、と思ってな。」
「どういう意味だ?」
「聞きたいか?」


08/18 14:35

この記事を 編集・削除

[公開] [小説]

コメント(0件)

代償

*この物語はフィクションです。

潰れて原型を留めていない軽自動車のドアをこじ開ける。
後部座席の裏に隠れていた子供達が溢れて彼女の元へと押し出されて来ていた。
2人の子供は既に人の形をしていなかった。
「うわぁぁ!」
俺は思わず悲鳴を上げた。

「それから、どうなったんだい?」
マサは冷えた紅茶を一気に飲み干し、俺に尋ねる。
「多分、子供達は彼女の言う『いい所』について行きたくなっちゃったんだろうね。
あの後すぐに警察と救急車を呼んで、事情を説明したよ。
子供達は当然助からなかった。
今、依頼人の旦那は刑務所。
妻は精神病院にいるよ。
離婚はしていない。
結局、依頼はうやむやになり、依頼料も無しのタダ働きさ。」
俺はふぅ、と溜め息をつく。
「それ以来、依頼人をなるべく調査に連れていかないようにしているよ。」
そして、微笑った。


08/17 22:28

この記事を 編集・削除

[公開] [小説]

コメント(0件)

絶叫

*この物語はフィクションです。

そして妻と大学生の乗る車は、前回依頼人が浮気を目撃したラブホテルへと道を折れた。
けばけばしい建物の列が目に入る。
「ほぼ浮気確定、ですね。」
俺は呟くが、依頼人は肩を震わせ、怒りの表情を露にする。
「落ち着いて下さい。」
俺は依頼人が落ち着くようにアドバイスしたが、既に遅かった。
腹が煮えくり返り、我を忘れ、何かがキレた依頼人。
突然、アクセルを踏み込むと依頼人はふたりの乗る車に追突した。
「がっ、!」
身体が前のめりになり、背中に衝撃が走る。
軽自動車はラブホテルの壁に衝突。
凄まじい轟音が響き渡る。
俺は運転席に座っている依頼人の顔を見た。
依頼人は軽自動車の中で妻と大学生が慌てふたむいているのを見ると愉快になり、何度も車をバックさせては追突するのを繰り返している。
「落ち着いて、止めて下さい。」
全身に痛みを感じながら、依頼人を止めようと必死に言う。
依頼人は笑っていた。
寒気がした。

何度目かの追突をした時、依頼人は軽自動車の後部座席のドアから赤い液体が滴り落ちているのに気付き、ついにブレーキを踏む。
「イャァアアアアァッ!」
同時に聞いた事もない妻の絶叫が響く。
俺は急いで車から這いずり出ると、妻の乗っている軽自動車へと向かった。


08/17 21:46

この記事を 編集・削除

[公開] [小説]

コメント(0件)

逢瀬

*この物語はフィクションです。

依頼人の妻は、夫(依頼人)が勤務に出ている平日に逢瀬を重ねていたらしい。
午前中に軽自動車を運転して出かけ、子供達が戻るまでには帰宅している。
そして夏休みの今。
子供達は家にいる。
依頼人と共に車の中で妻の行動を調査していた。
「流石に子供達のいる夏休みに行動は起こさないでしょう。」
俺は依頼人に言う。
「いや、分かりませんよ。」
依頼人の言う通り、妻は行動を起こした。
大学生である浮気相手は夏休みでも逢いたがった。
妻は拒む事なく出掛けようとしている。
「何処行くの?」
盗聴機から子供達の声が聞こえている。
「いい所よ。」
子供達の問いへ、妻は冗談半分にそう答えた。
「そういえば、何故浮気だと思って依頼したんですか?」
依頼人の車の助手席で、俺は尋ねる。
「ふたりがホテルから出てくるのを偶然見かけたんですよ。」
それきり会話は無く、車内は静かなものだった。
依頼人の妻は軽自動車に乗り、例の大学生に逢った。
依頼人の運転する尾行車に気付く事なく、軽自動車を走らせている。
車内で信号待ちの度にキスするのを目撃し、俺は助手席で写真を撮る。
「……。」
俺は何とも言えない苦々しい表情でシャッターを切っていく。


08/17 21:26

この記事を 編集・削除

[公開] [小説]

コメント(0件)

浮気調査依頼

*この物語はフィクションです。

「妻が浮気しているようなんです。」
男は不動産の営業をしていると言う。
「はぁ、つまり浮気調査をして欲しいと。」
「そうです。いつものらりくらりと言い訳して逃げてしまうので、今度こそはと思いまして。」
妻は地元の大学生とパート先のコンビニで知り合ったのだという。
渡された写真を見て、俺は呟く。
「若いですね。28歳位でしょうか?」
「見た目だけですよ。
もう40歳になろうってのに30歳前にしか見えないんですよ。
2人の子供もいるんですよ。」
「そりゃ驚きだ。」
小学校3年生と2年生の兄弟がいた。

「分かりました、調査しましょう。」
俺は依頼を引き受けた。


08/17 10:33

この記事を 編集・削除

[公開] [小説]

コメント(0件)

土下座探偵我妻鏡嘩

*この物語はフィクションです。

「だぁー、暇だ。むっちゃ暇。」
新米探偵の俺は事務所でひとり呟く。
「ユウは友達と遊びに行ってるし、依頼は滅多に無いし。あ〜、暇っ。」
「あの…」
俺の背後から誰かの声が聞こえる。
「あぁ、何ですか?今依頼無くて暇なんスよ。」
振り向いて男に言う。
「あの、調査をお願いしたいのですが。」
男の一言で俺は固まった。
「失礼しましたー!!」
土下座した。


08/17 10:15

この記事を 編集・削除

[公開] [小説]

コメント(0件)

とある事件のインデックス

*この物語はフィクションです。

「依頼無し、か。
うん、平和だなぁ。」
ユウに入れて貰った紅茶をすすりながら呟く。
「何年寄りくさい事言ってるのよ。」
ユウは苦笑する。
「平和な事は良い事だよ。
実は昔、浮気調査を依頼されて後味の悪い思いをした事もあったんだよ。」
俺はとある昔の事件を思い出していた。
「へぇ、ちょっとその話を聞かせて欲しいな。」
マサは興味津々といった表情で俺の顔を見つめている。
「うん、これは俺が探偵になってすぐの頃の話さ。」
俺はゆったりとした口調で昔の事件の話を始めた。


08/14 22:39

この記事を 編集・削除

[公開] [小説]

コメント(0件)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17



Sponsor

Menu

WriterProfile

Juggler-R

Calendar

まえ  2018/9  つぎ
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
-- -- -- -- -- -- 01
02 03 04 05 06 07 08
09 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 -- -- -- -- -- --

Category

FriendsEntry

      more>>

NewComments

Search

rss
rss2

QRコード