「Navy」

名も無き花 4

*この物語はフィクションです。

「それじゃあ、嘲笑して下さい。」
光だけの存在は、懇願する。
「それも、出来ません。
私は人間だった頃、他人の命を奪って自分の命すらも奪ったのです。
そんな卑劣な私が、あなたを嘲笑する資格なんてありません。」
「それじゃあ、私はどうすればいいの?」
光だけの存在は、困ったように呟く。
死神は、懐から一通の手紙を取り出すと、光だけの存在に言う。
「あなたの母親から手紙を預かっています。」
「手紙?」
「そう、あなたに。」
死神はゆっくり頷くと、預かっていた手紙を読み上げた。


11/10 22:29

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名も無き花 3

*この物語はフィクションです。

光だけの存在は、しばらく沈黙していたが、やがてポツリポツリと話し始めた。
「母と約束したの。
私が産まれたら、一緒に花畑を見に行こうって。
だけど、私は約束を破ってしまった。」
「約束?」
「そう、母は流産して、私は名前も身体も無いまま、人間の世界に産まれる事も無く、母の顔を見る事も無く、死んでしまった…
だから、どうか。
こんな親不孝な私に罰を与えて下さい。」
光だけの存在は、消え入りそうな声で死神に伝える。
「姿は悪魔に似ているが、私は死神なのだよ。
あくまでも命を運ぶ存在。
それ以外の何物でもない。
私は罰を与える資格は持っていないのですよ。」
天使のような笑顔で死神は答えた。


11/10 22:18

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名も無き花 2

*この物語はフィクションです。

ねぇ、どうか。
私を笑って下さい。
人差し指つきつけて、馬鹿にするように。
嘲笑って下さい。
名前も、身体すらも存在しない私を、嘲笑して下さい。
「嘲笑する必要などないと思うのだが。」
黒い特攻服姿の奇妙な死神、Navy(ネイビー)は小さな光に向かって話しかける。
「あなたは誰?」
小さな光だけの存在は、死神に向かって尋ねる。
「私を定義するものは何も無いが、人間の世界の言葉を借りるなら死神と呼ぶね。」
死神は無表情で自分の正体を告げると、静かに木刀を下ろした。
「さて、名も無き花よ。
君は一体どうしたのだ?」


11/10 22:13

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名も無き花 1

*この物語はフィクションです。

――嗚呼、そっか。
私は××を持つ必要はなかったんだ。
――そうなのですよ。
あなたは××に囚われる必要はなかったのです。
さぁ、今から。
もう一度××を叶えに行きましょう。

特攻服姿の奇妙な死神は、酷く優しく微笑むと、黒く大きな、コウモリに似た翼を広げた。

そして彼女は生まれ変わる。
名も無き花は、枯れて、咲いた。


11/10 21:44

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パソコンが恋をした話 B

*この物語はフィクションです。

「実は、あなたに伝えたい事があって此処に来たのです。」
何処か悲しい表情をした死神は、パソコンに向かって話し続ける。
「伝えたい事?」
「日比谷 隆司さんは、一週間前に死にました。」
「死んだ?」
「えぇ、死んだのです。」
「死んだってどういう事?」
「肉体を亡くし、魂だけの存在になって、この世界から姿を消したのです。」
「もう会えないっていう事?」
「えぇ、姿を現す事も、会話をする事も出来ません。」
「そんな…」
Enter(エンター)はしばらくフリーズする。
死神Navy(ネイビー)は、そんなEnter(エンター)の様子をじっと見つめていた。
「これから私はどうなるの?」
「違う人間の所に行く事になるかもしれません。」
「そんなの嫌よ!」
「しかし、」
「だったら壊して。
粉々にぶっ壊して。
そうしたら、私は死ねる。
私という人格は消えてなくなるわ。」
「本当に、あなたはそれで後悔しませんか?」
「大丈夫。後悔なんてしない。」
「…分かりました。」
死神Navy(ネイビー)は木刀を力一杯パソコンに振り下ろした。
バキバキッという音が響き、火花が散る。
画面は砂嵐になり、やがてプツリと電源が切れて、真っ黒になった。
「さようなら。」
そしてパソコンは何も言わなくなった。

END.




10/30 16:35

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パソコンが恋をした話 A

*この物語はフィクションです。

いつから。
私は心を持つようになったんだろう?
いつから。
私は人を好きになってしまったのだろう?
私は―
人の手によって作られた、機械なのに。
「君は恋をしているのだね?」
黒い特攻服姿の男は、パソコンに向かって話しかけた。
「えぇ、そうかもしれない。」
心を持つパソコン、Enter(エンター)は画面に自分の気持ちを表示させていく。
流れるようにカタカタと音が響く。
「私は、あの人に恋してるのかもしれない。」
「あの人とは誰かな?」
死神、Navy(ネイビー)は訊いた。
「この部屋に住んでいる人、日比谷 隆司(ひびや たかし)様。
私、あの人と一緒にいる時が一番幸せなの。
私は機械なのに、変ね。」
「変じゃないさ。
物にも魂は宿るのですよ。」
死神は優しく笑う。
「でも、私は…」
「どうかしたんですか?」
「私は、もう嫌われてしまったんだわ。
そうに決まっているわ。」
「どうして?」
「だって、隆司様はもう一週間も私と会ってないんですもの。」
死神はその言葉を聞いて、顔を曇らせた。
「それは…」




10/30 16:29

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夢から醒めた夢 2

*この物語はフィクションです。

「君は毎日、朝、目覚めて、服を着替えたりして学校へ行く。
そして学校から帰って来る。
毎日同じ事の繰り返し。
おかしいと思ったりはしないのかな?」
特攻服姿の男は、ズバズバとものを言う。
少し、うっとうしく思える。
しかし、特攻服姿の男は話を続ける。
「ねぇ、もし君のこの世界が虚構…フィクションだとしたらどうする?」
どういう意味だ?と叫ぼうとしたが、何故か声が出なかった。
やがて、視界は滲んで見えなくなった。
暗転。
「…リャン…天亮!!」
誰かの声が聞こえる。
白い壁と白い天井。
少し、首を動かすと、栄養剤の入った点滴の袋と…
「天亮!」
涙目で自分の名を呼ぶ両親の姿があった。
身体が重たかったのは長い時間眠っていたせいで。
嗚呼、そうか。
夢から醒めた夢を見た。

END.


10/29 09:48

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夢から醒めた夢 1

*この物語はフィクションです。

青年は、盛大に欠伸をかますと、布団から抜け出す。
彼の名は、天亮(ティエンリャン)。
彼の名前は中国語で「夜明け」という意味を持つ。
何故か、今日は身体が重たい。
「君は、気付かないのかい?」
黒い特攻服姿の奇妙な男は、天亮の背後から声をかけた。
「どういう、意味かな?」
天亮は突然現れた男に驚きながらも、しどろもどろに答える。
「分からないなら、それでも構わない。
しかし、君は疑問に思わないかい?」
特攻服姿の男は、何処か寂しそうな表情で天亮に問いかける。
「だから、どういう意味かな?」
天亮は少しむっとした顔で特攻服姿の男に再度訊いた。


10/29 09:29

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ジャックと死神 2

*この物語はフィクションです。

「よく分かったな。」
ジャック・オ・ランタンと呼ばれたカボチャ頭の怪物は、ランタン片手に呟く。
「別名、ジャッキー・ランタン。
鬼火で人を惑わし、旅人を迷わせたり、底なし沼に引きずり込むと言われている。
現在では、カボチャの頭を持ち、手にランタンを持ったハロウィンの怪物としての姿が有名だね。」
と死神は言った。
「君は何者だ?」
カボチャ頭の怪物は、Navy(ネイビー)に問う。
「私は俗に言う死神です。
名はNavy(ネイビー)。
残念ながら、私は悪魔でも旅人でもないです。」
「…そうか。」
カボチャ頭の怪物は、少しションボリした様子。
「ジャック・オ・ランタン、貴方は何をしているのですか?」
死神はカボチャ頭の怪物に訊く。
ジャックはクククと笑うと、
「呼ばれたような気がしたからさ。」
と言った。
「あぁ、それはきっと、ハロウィンだからですよ。」
死神は言った。
「そうか、ハロウィンか。」
ジャックは納得すると、
「ありがとう。じゃあそろそろ行く事にするよ。」
と手を振った。
「えぇ、さようなら。」
と死神も別れを告げた。

END.

*参考文献/「世界の神獣・モンスターがよくわかる本」(東 ゆみこ監修・造事務所編著/PHP文庫)


10/22 18:57

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ジャックと死神 1

*この物語はフィクションです。

ある夕暮れ時。
その街はハロウィン一色だった。
オレンジ色したカボチャの頭が並べられ、どこか暖かい雰囲気を醸し出している。
死神、Navy(ネイビー)は
「ハロウィン、か。」
と呟くと、そっと微笑んだ。
「Trick or treat!(お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ!)」
悪魔や魔法使いの仮装をした子供達が、定番のセリフと共に、Navy(ネイビー)の脇をすり抜けて行く。
やがて日が沈み、辺りが暗くなる。
人通りがなくなり、暗闇の夜道が、Navy(ネイビー)の前に広がっていった。
と、そこへひとつのランタンの灯りが見えた。
ザリッ、ザリッ、ザリッ、ザリッ。
足音が聞こえる。
「ジャック・オ・ランタンだろう?」
死神Navy(ネイビー)は言った。


10/22 18:45

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