小説

事情徴収

*この物語はフィクションです。

「只今。」
やや疲労した声で言う。
あれから2時間、事情徴収は続いた。
俺は『コインロッカーから赤ん坊の様な声が聞こえたから、駅員を呼んで開錠してもらった』と何度も説明した。
ようやく警察から解放された瞬間、今度はテレビ局のリポーターに捕まった。
適当にインタビューの質問に答えて、逃げるように事務所に帰って来た、という訳である。
「遅い。」
相変わらず絶妙なタイミングでユウとマサが同時に言う。
「2時間以上も何してたのよ。
もうお昼ご飯済ませちゃったわよ。」
ユウは膨れっ面で言う。
ご飯はいつもユウのお手製なのだ。
「ゴメン、ちょっと事件に巻き込まれてたんだ。」
マサはテレビを眺めながら言う。
「ひょっとして、今テレビでやってるコインロッカー事件かい?」
テレビに視線を移す。
2時間程前に赤ん坊を発見したあの駅の映像がリポーターの声と共に流れていた。


07/14 19:26

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捨てられた子供

*この物語はフィクションです。

【カチリ】
緊張の中、コインロッカーの封印は解かれる。
【オギャァ、オギャァ】
小さい密室にいたのは、やはり赤ん坊だった。
「うっ、」
異様な光景である。
野次馬から小さな悲鳴が上がる。
捨てられた子供。
どんな理由があるにせよ、それは人として禁じられた違法行為。
人間じゃない。
人間じゃない。
ギンの言葉がグルグル廻る。
現代版姥捨て山。
現代版ヘンゼルとグレーテル。
廻る、廻る。
言葉が頭の中で廻り続ける。
すぐに赤ん坊は病院に搬送され、俺は事情徴収の為、警察署まで同行する事となった。


07/14 17:21

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合鍵

*この物語はフィクションです。

駅員を呼んだ。
何か声が聞こえないか確かめて貰う。
【オギャァ、オギャァ】
相変わらずコインロッカーからは赤ん坊の泣き声が聞こえる。
勘違いなんかじゃ無い。
コインロッカーには赤ん坊が閉じ込められている。
駅員は警察を呼び、コインロッカーの合鍵を持って来た。
すぐに警官が駆けつけ、俺と駅員と警官の3人で、事実を確かめようとした。
背後には数人の野次馬達が、何事かと様子を伺っている。
【オギャァ、オギャァ】
ふと、ギンが言い放った言葉を思い出した。

『子供を捨てる母親なんて、生きている価値も無い。
人間じゃない。
猿より下等だと俺は思うね。』


07/14 14:44

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泣く、声

*この物語はフィクションです。

ひとつだけ、鍵がささっていなくて使用中のロッカー。
そこから、僅かに。
微かに声が聞こえる。
赤ん坊が泣く、声。
空耳か?
【オギャァ、オギャァ】
空耳じゃない。
「まさか。」
コインロッカーの中に赤ん坊がいるのだろうか。
ギンがコインロッカーを見つめていたのは、この赤ん坊の様な声を聞いたから?
だとしたら。
【オギャァ、オギャァ】
赤ん坊の声はまだ聞こえる。
呼ばなければ。
駅員を呼んで、確かめなければ。


07/14 10:07

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コインロッカー

*この物語はフィクションです。

「くそっ、」
後味が悪く、舌打ちしていると、ふとコインロッカーが視界に入った。
「そういえば。」
ギンは何故コインロッカーを食い入る様に見つめていたのだろうか。
俺はギンと同じくコインロッカーをまじまじと見つめる。
特に変わった様子は無く、駅に置いてある普通の白いコインロッカーである。
さらに近付いて見てみる。
そして。


07/14 00:33

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人間じゃない

*この物語はフィクションです。

「また人を殺すのか?」
「ああ。今回は生きている価値も無い人間だ。」
「何故、断言できる?」
「子供を捨てる母親なんて、生きている価値も無い。
人間じゃない。
猿より下等だと俺は思うね。」
ギンは忌々しげに吐き捨てる。
「では、そういった人々の命や人生を終わらすお前は何様だ。」
「殺し屋、もしくは殺人鬼と呼ぶね。」
ギンはニヤリと微笑す。
「殺人なんて止めろ。」
「五月蝿ぇ、探偵。
とにかく俺の邪魔をするな。」
ギンは立ち去る。
「待てよ。」
俺は呼び止めるが、ギンは既に逃走した後だった。


07/14 00:22

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Station.

*この物語はフィクションです。

ギンは駅の方へと歩いて行く。
階段を降りる。
ギンはコインロッカーの前で立ち止まり、ジッとコインロッカーを見つめている。
何をしているんだ?
駅に置いてある普通のコインロッカー。
俺はギンに近付いた。
「何をしているんだ。」
ギンは一瞬驚いた顔をして、呟く。
「別に。これから仕事に行くだけさ。」
仕事。
つまりはまた人を殺すという意味である。


07/13 23:15

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本屋にて

*この物語はフィクションです。

事務所の近くの本屋で専門書を買う。
俺は伝説や神話、魔術や魔法、更には民話や童話も好む。
別にそれらの事を信じる訳では無く、あくまでも予備知識として蓄えておくのだ。
「魔法・魔術」とゴシック体で書かれた大判サイズの本をレジに持って行き、清算してから本を小脇に抱えると、俺は大型書店から外へ出る。
丁度その時。
銀色の頭髪の男が見えた。
銀色の男。
確かに見覚えがある。
通称『ギン』と呼ばれる殺し屋である。
訊きたい事が山ほどある。
慌ててギンの後を追った。


07/13 22:49

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姥捨て山との共通点

*この物語はフィクションです。

「ちなみに、似たような話では、ヘンゼルとグレーテルが有名だね。
姥捨て山と違う部分は、捨てられる人物が2人で、老人ではなく子供になっているが、途中で目印をつける等の大方のあらすじは似ている。
こうして考えてみると、民話や童話の世界も楽しいものだよ。」
俺は微笑った。
「さて、と。
少し出掛けてもいいかな。」
「何処に行くの?」
「本屋に行って来るよ。
その間、事務所の留守番をお願いするよ。」
「行ってらっしゃい。」
マサとユウは同時に言った。


07/13 10:28

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メッセージ

*この物語はフィクションです。

「ところで、何故殿様はあんな御触書をだしたんだろう。」
マサは呟く。
「いい所に気付いたね。
ここから先は俺の推測に過ぎないが、実は殿様は老人に対して扱いが酷い。
では何故そうなったか考えてみると、幾つかの仮説が立てられる。」
俺は「例えば」と前置きして言う。
「殿様は幼い頃、親に捨てられたとしたら、どうだろう。
親に対して嫌悪感が生まれる可能性も十分考えられる。」
ユウとマサは意外そうな顔をして、俺の話を聞いている。
「では更に現代の情況に合わせて考えてみようか。
例えば、殿様は幼い頃、親から虐待を受けて育ったとしたら、どうなるだろうか。
反感とか嫌悪を通り越し、憎悪していたのかもしれない。
この物語はね、現代へのメッセージかもしれないよ。」


07/12 22:48

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