小説

証拠不十分

*この物語はフィクションです。

「実は、俺が釈放されたのは、赤髪の男の死体の傍に、とある物体が落ちていたからなんだ。」
マサはボソッと呟く。
「証拠不十分じゃなかったのかい?」
俺はマサに訊く。
「それは最終的結論に過ぎない。
これは警察官から教えて貰った情報なんスけど、死体の傍に謎の人物の髪の毛が落ちていたそうなんスよ。」
マサは声を潜めて俺に言う。
「謎の人物の髪の毛?」
「そう、加藤でもなく赤髪の男でもなく、俺でもなく、探偵さんでもない髪の毛。
落ちていた髪の毛は銀髪だったんですよ。」
「ぎ、銀髪…それじゃあ老人が殺人をしたと言うのか?」
マサはゆっくり首を横に振った。
「ところがその銀髪は、10代から30代前半の若い年齢の髪の毛だと判明したんですよ。
とにかく、その謎の銀髪が落ちているという事は、他の誰かが殺人をしたとして、俺の容疑を外したみたいなんスよ。
で、結論として…」
「証拠不十分、か。」
俺は呟いた。


10/06 08:04

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Who?

*この物語はフィクションです。

「何と言ったらいいのか複雑な心境だけど、とりあえず釈放おめでとう。」
俺はマサに言う。
「何と言ったらいいのか複雑な心境だけど、有り難うございます。」
マサははにかんで言う。
「…って言っても証拠不十分で釈放されたんスけどね。」
「証拠不十分?」
ユウは首をかしげた。
「マサ、ちょっと待て。
状況を簡単に整理してみよう。
マサとユウと俺の3人で加藤君が本当に殺されたのか確かめに行ったよな?
そこで、加藤君の死体と、何故か赤髪の男の死体を発見した。
赤髪の男は、加藤君を殺していた。
それを目撃したのがマサだった訳だ。」
「うん、大体そんな感じ。」
「では、マサは何で容疑をかけられ捕まった?」
俺はマサに尋ねる。
「加藤と赤髪の男を殺した容疑。
俺は2人とも殺してないと主張した。」
マサはしっかりとした口調で言う。
「マサは加藤君が赤髪の男に殺される所を目撃している。
よってマサの証言を信じるなら、加藤君を殺したのは赤髪の男。
では、赤髪の男を殺したのは誰だろう?」


10/06 07:39

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マサ釈放

*この物語はフィクションです。

ピンポーン
探偵事務所に電子音が響く。
来客を告げる音。
俺は立ち上がり、事務所のドアを開ける。
「うぃっす。」
そこにいたのは3日前に警察に連行されていったマサだった。
「マサ、釈放されたのか?」
俺は笑顔を浮かべてマサを出迎えた。
「釈放っていうか何て言うか…まぁとにかく容疑は晴れたんスけどね。」
マサははにかんだ。
「少し、その事について話をしたいんだけど。」
俺の申し出に、マサは喜んで応じた。


09/23 16:13

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優しい心

*この物語はフィクションです。

やがて救急隊員と警察官が現場に駆けつけたが、案の定2人は既に死体になっていた。
俺は大方の事情を警察官に話したが、マサは容疑者として警察署へと連れて行かれた。
そして俺とユウは事務所へ戻った。
「なぁ、ユウ姉さん。」
「何?」
「マサは」
「大丈夫。きっと戻って来るわよ。
だって、彼は…優しい心の持ち主だもの。」
ユウ姉さんは、優しく笑った。
「証拠はないけどね。」
ユウ姉さんは悪戯っ子のようにペロリと舌を出す。
俺は姉さんに釣られるように微笑むと、
「だよな。」
と言う。
それから3日という月日が流れた。


09/15 12:20

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2体

*この物語はフィクションです。

「なんじゃこりゃあ。」
太陽に吠えた。
俺は濃い顔で松田優作になりきった後、沈黙したままマサの顔をチラリと見る。
「こ、これは…」
マサは青ざめた顔をしている。
腰が抜けたらしく、ペタンと座り込んでいた。
俺の必死のギャグに気付く事はなく、ガタガタと震えている。
無理もない。
マサは死体を見るのは初めてなのだ。
「マサ。ここで死んでいるのは加藤君だね?」
俺はマサに確認する。
マサは声も出ないらしく、無言で首を縦に振った。
「ふむ。となるとこっちは例の赤い髪の奴だな。」
俺は淡々と言う。
俺とマサの前、リビングには2体の死体が転がっていた。
1体は加藤の死体。
そしてもう1体は赤い髪の男の死体が胸を刺されて仰向けに倒れている。
「マサ。」
俺はポケットから携帯電話を取り出し、マサに投げ渡す。
「警察と…多分手遅れだけど救急車を呼んでくれないか?」


09/11 13:21

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部屋の中に

*この物語はフィクションです。

3人はそのままの姿勢で硬直していたが、マサはフッと身体の力を抜く。
「誰もいないみたいだな。
物音ひとつしない。」
「ああ。だが油断するなよ。」
「これからどうしたらいい?」
マサは俺に質問する。
「部屋の中に入ってみよう。
マサは俺の後について来てくれ。
ユウ姉さんはそのままここで待機。
15分以上経っても俺とマサが出て来ない時や、何かあった時はすぐに警察に連絡してくれ。
あ、出来るだけドアから離れて。2メートル位。OK、姉さんはそこに待機。」
「分かったわ。」
ユウ姉さんは頷く。
「よし、行こう。」
マサは言った。
ユウだけを残して、2人は部屋の中へと足を踏み入れた。


09/11 13:01

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Open the door.

*この物語はフィクションです。

小さくとも小綺麗なアパートがそこにあった。
俺とユウ姉さんとマサの3人は、小さなアパートの入り口で、少し会話をしていた。
「ここが君のアパートであり、事件現場…だね?」
俺はマサに確認した。
「ああ。」
マサは短く返事すると、ついて来いと合図する。
3人はアパートの階段を昇って、マサの部屋の前に立った。
「じゃあ、開けるぞ。」
マサは鍵を開け、やや緊張した面持ちで俺とユウに言った。
「OK」
俺はマサにOKサインを出した。
「せぇーのぉっ!」
マサは掛け声と共に、バァンと勢い良くドアを開ける。
静寂が広がった。


09/10 21:27

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Go.

*この物語はフィクションです。

「よし、じゃあ行ってみよう。」
俺は言った。
「行くって何処に行くのよ?」
ユウ姉さんは俺に訊く。
「事件現場。」
俺は即答する。
「やめた方がいいと思う。」
マサが止めた。
「もしまだあの赤い髪のアイツがいたとしたら。」
「いないと思うね。俺は。」
俺はまた即答した。
「考えてもみろよ。
昨日の今日だ。
丸一日気味の悪い死体と一緒にいるはずがない。
既に逃げている確率が高いね。
ましてや、マサという目撃者がいる。
俺なら当然、逃げるか…もしくは目撃者であるマサを消すね。」
「消すってまさか…」
「うん、既に今、君の身も危険である可能性もあるんだ。」
「そんな…」
「マサ、君はこれから何人かと一緒にいた方がいい。
少なくとも2人以上は一緒に居て欲しい。
そして…俺は本当に殺人があったのかどうか、事実を確認してみたいんだ。
できれば、一緒に来て欲しい。」
マサは暫く黙りこくっていたが、やがて
「分かった。」
と言って頷いた。


09/10 18:00

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赤髪

*この物語はフィクションです。

「昨日、俺は仕事が終わって、家に帰って来た。
部屋のドアを開けた瞬間、何かドタドタッていう大きな音がしたかと思うと、加藤の叫び声が聞こえた。
そして中に入って見てみると、加藤が刺し殺されていたんだ。」
マサは昨日の事を思い出したのか、怯えた表情を浮かべている。
「ちょっと待て。それじゃ君は犯人の顔を…」
「ああ、しっかり見たさ。」
マサは真っ青な顔で震える。
「忘れもしないさ。
そいつは赤い髪をしていた。」
「あ、赤い髪?」
「血のような真っ赤な色だった。」
「間違いないのか?」
「間違いないさ。嘘くさく思えるけどね。」
「それからどうした?」
「勿論、逃げた。」
「ふむ。加藤君とやらは刺し殺されていたと言ったね?」
「ああ。」
「もう少し詳しく教えて欲しい。」
「赤い髪のそいつは、何度も何度も加藤を刺していた。
勿論、凶器は刃物だった。
加藤の返り血を浴びて、狂ったように笑ってたんだ。
俺は怖くてすぐに逃げた。
全速力でね。そして…」
「道端で震えている所を俺が見つけたって訳か。」
俺はマサが話す、嘘のような本当の話を聞いて、思考を巡らせた。


09/09 20:40

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ルームメイト

*この物語はフィクションです。

「俺は友人が殺される瞬間を見た。
だけど、俺は友人を見殺しにした。」
マサは淡々と語る。
「ちょ、ちょっと待て。
それはいつの話だ?」
俺は話を中断させ、マサに訊く。
「昨日の話だ。」
「「き、昨日!?」」
俺とユウ姉さんはほぼ同時に言う。
「一体、何処で殺人を目撃したんだ?」
「アパート。友人と家賃を折半して、一緒に暮らしてた。
いわばルームメイト。」
「友人の名前は?」
「加藤 哲(かとう てつ)。
俺と同い年で、とてもいい奴。」
「ふむ。その加藤君とやらが殺される瞬間を見たと言うんだね?」
「そうだ。」
マサは頷いた。


09/09 07:38

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