小説

ボロボロの彼は語る

*この物語はフィクションです。

「西島 雅海…君。君は何故に雨の中、ボロボロな格好で座っていたのかな?」
俺は笑いを堪えながら訊く。
「俺の名前をフルネームで呼ぶな。マサって呼んでくれ。」
雅海もとい、マサは不機嫌そうに口元をヒクヒクさせながら言う。
そしてマサは、俺に訊いた。
「なぁ、アンタ。人が殺される瞬間を見た事があるか?」
「は?」
俺は凍りつく。
「一体、何があったの?」
ユウ姉さんはマサに訊く。
「多分、俺の話を聞いても信じられないと思う。
だけど、聞いて欲しい。
俺は、人が殺される瞬間を見た。」
マサが言う。
俺とユウはハッと息を飲んだ。


09/08 08:04

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My name is…

*この物語はフィクションです。

「美味い。」
青年はカップに入ったお茶を見つめながら呟く。
「あら、貴方喋れたのね。」
ユウ姉さんはニコニコ笑って言った。
「喋れない訳じゃない。」
青年はユウ姉さんに向かって言う。
「君の名前は?」
俺は改めて青年に聞く。
青年は俺の質問には答えず、美味い美味いと言いながらお茶ばかり飲んでいる。
「俺の質問はスルーかよ。」
俺はボソリと呟く。
「ねぇ、名無しの権兵衛さん。
貴方にお名前があるなら私と弟に教えてくれないかしら?」
ユウ姉さんは俺を指さしながら青年に尋ねた。
青年はしばらく沈黙していたが、やがておずおずと自分の名前を言った。
「西島 雅海(にしじま まさみ)。」
俺は名前を聞いて爆笑した。
「アッハッハッハ!男なのに名前がマサミって、女みたいな名前だ!!」
青年、もとい雅海は俺の顔面にパンチを繰り出した。
喧嘩になった。


09/07 08:58

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名無し

*この物語はフィクションです。

「君の名前は?」
俺は青年の目を見つめながら、ゆっくりした口調で言う。
青年は何も言わず、相変わらず焦点の合わない目をしている。
「…とまぁ、質問しても何も応えてくれないんだ。
だから、とりあえず連れて来たんだよ。」
俺は困った表情でユウに言った。
「あらあら、それは困ったわね。」
ユウ姉さんは大きめのマグカップを片手に持って言った。
「名無しの権兵衛さん、お茶どうぞ。」
青年は焦点の合わない目をユウに向けると、ジッとユウの顔を見つめている。
「あらあら。」
ユウ姉さんは顔を赤らめた。
青年は無言のまま、ゆっくりした動作でマグカップを受け取ると、そっとお茶を飲み始めた。
そして。


09/06 13:20

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俺と青年と姉のユウ

*この物語はフィクションです。

「只今。」
俺は青年を連れて、事務所のドアを開ける。
「おかえり。あら…」
姉のユウは俺の後ろにいる青年に気付くと、不思議そうに青年の顔を見つめている。
「道端で震えてたから、拾って来た。」
俺は適当に説明すると、自宅になってる2階へと入って、予備の服を取り出してきた。
「拾って来たって…犬じゃないのよ?」
ユウ姉さんはあらあらと困った表情で熱いお茶を入れに台所へと向かう。
「分かってるって。」
俺は青年に服を渡して着替えろとジェスチャーする。
青年はしばらくボーッとしていたが、やがてゆっくりと着替え始めた。


09/06 09:20

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そうして 君も

*この物語はフィクションです。

Roses are red,
Violets are blue,
Sugar is sweet
And so are you.
薔薇は赤い
スミレは青い
お砂糖は甘い
そうして 君も

『谷川俊太郎訳、マザーグースのうた第1集より』

俺がその青年と出会ったのは、探偵事務所を開いて数日経った頃だ。
青年は茶色い髪とボロボロの服で、雨が降る中、座り込んで震えていた。
「どうした?」
俺はしゃがみ込んで青年に語り掛けるが、彼はひとことも言葉を発する事はなく、焦点の合わない目で前を見続けている。
「何があった?」
俺はゆっくりした口調で、もう一度声を掛ける。
「………。」
やはり彼は何も言わない。
「とにかく、このままじゃ風邪を引く。ウチに来なさい。」
と言って青年の手を引くと、青年は意外に大人しく俺の言う事を聞いて、ついて来た。


09/06 08:54

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不明白

*この物語はフィクションです。

「しかし、俺には記憶が無い。
本当に俺が人を殺したのかどうかが分からない…」
俺は呟く。
「何があったか知りたいか?」
ギンは俺を見つめ続けている。
「いや、自分の記憶は自分で思い出すさ。」
「…楽しみにしてるぜ、探偵。」
銀髪の殺し屋はそっと微笑うと、すぐに事務所を立ち去った。
ギンが立ち去った後、マサはゆっくり肩の力を抜くと、ふぅと溜め息をひとつついた。
「相変わらず気味の悪い野郎だな。」
ギンが立ち去った後のドアを睨み付けて、マサは悪態をつく。
「彼は何をしに来たんだろう。意味不明だ。」
俺は困惑した表情を浮かべて、首を捻る。
「考えるだけ無駄だと思うわよ。」
ユウはそう言うと、雑誌を開いた。
そして今日も日が暮れる。


09/05 18:16

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幻の証拠品

*この物語はフィクションです。

日記帳のページを捲る。
6月29日(水)
銀髪の青年に質問をした。
「私が殺されてしまったらどうする?」と。
青年は答える。
「殺した奴を探す。そいつがたとえ地球の裏側に居たとしても、必ず探し出して何故殺したのか理由を訊きたい」と。
意外な答えだったけど、私が殺し屋に殺されても彼なら大丈夫。
6月30日(木)
あと少し。
あと少しで私は伝説の殺し屋に殺される。
7月1日(金)
明日、ついに明日だ。
私は、我妻 鏡嘩という名の伝説の殺し屋に殺される。
少し、心残りなのは。
私があの銀髪の青年を好きになってしまった事。
本当は死にたくない。
もっと色々と話をしたかった。
2人で笑って幸せな日々を過ごしたかった。
死にたい時には死ねなくて。
死ねる時には死にたくない。
怖い。
7月2日(土)
ついにこの日が来てしまった。
これが、私の最初で最期の我が儘です。
銀髪の君へ。
ありがとう。
さよなら。
隠しててごめんね。
多分何の事か意味が分からないと思う。
分からない方がいいと思う。
だから、これ以上は言いません。
逝って来ます。

俺は日記帳を閉じると、
「信じられない…」
と呟く。
「どんなに信じられない事でも、証拠としてそこに存在する限り、それが真実になる。」
ギンはまるで探偵や警察官のような科白を言うと、日記帳を懐に入れた。
「だが、この証拠は俺意外には誰にも認められていない。
誰にも認められていない限り、これは幻の証拠品として存在する。」
ギンは俺の顔を睨みつけると、微笑した。


09/01 16:56

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何処かで見た字

*この物語はフィクションです。

「仮に、それらの話が本当だとして…
それらを裏付ける証拠が無い。」
俺は切り捨てた。
「此処に、1冊の日記帳がある。
これが最後の証拠だ。」
ギンは懐から小さな文庫本サイズの日記帳を取り出し、俺に手渡す。
暫くギンを睨みつけていたが、俺は渋々日記帳を受け取り、ページを捲る。
【Dear.銀髪の君へ
この日記帳は貴方の為の物です。
貴方だけに、この日記を読んで欲しいのです。
彼にこの日記帳を渡して下さい。】
という文字が一番初めのページに書かれていた。
何処かでこの字を見た気がした。


09/01 16:48

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マザー・グースの詩のように

*この物語はフィクションです。

フェル先生 僕はあなたが嫌いです
どういう訳か 嫌いです
でも確かです まったく確か
フェル先生 僕はあなたが嫌いです
『谷川俊太郎訳、マザーグースのうた第1集/草思社より』
マサがさっきの詩を日本語に訳す。
唄うように。
そして
「意味が、分からないな。」
と俺は吐き捨てる。
「キョウは先生ではなく、探偵よ。」
ユウは呆れたようにギンに言った。
「フェルという名前でもない。」
マサはユウに続いて言う。
「まるで君は、マザー・グースの詩のようだ。
意味が分からない。
分かりにくいんだよ。」
俺はギンを睨みつける。
ギンは俺には構わず、話を続ける。
「昔、俺は銀髪という理由から、赤ん坊の頃、両親に捨てられ、とある人物に拾われた。
やがて俺は成人し、恋人が出来た。
いや、恋人になる所だった。
しかし、彼女は突然死んだ。
原因不明、自殺か他殺かも分からなかった。
しかし、彼女は1冊の日記帳を残していた。
そこに…我妻 鏡嘩の名前が書いてあったんだよ。
勿論、その日記帳を警察まで持って行ったが、全く相手にしてくれなかった。」


09/01 09:58

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The songs of Mother Goose.

*この物語はフィクションです。

「I do not like thee,Doctor Fell,
The reason why I cannot tell,」
銀髪の殺し屋は唄うようにその詩を呟く。
俺は暫く沈黙し、やがて続きの詩を言い放った。
「But this I know,and know full well,
I do not like thee,Doctor Fell.」
殺し屋、ギンは微笑った。
「知ってたか。この詩を。」
「あぁ。マザー・グースの詩だな。」
「俺はな、大切な人を殺された。
そいつだけは許す事が出来なくてな。」
「記憶を無くす前、俺はお前の大切な人を殺した…と言いたいのか?」
「そうだ。」


08/31 22:27

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